評価:☆☆☆★(3.7)読み物としての評価です。
本書は1835〜1919年を生き”鉄鋼王”と呼ばれたアンドリュー・
カーネギー本人によって書かれた
自伝です。
序盤と最後の方の友人・知人について言及しているところは少々退屈ですが、4章「電信局にて」から始まる
カーネギーの出世物語は素晴らしく、豊臣秀吉の出世物語のようですらすらと読めます。
大昔の成功者の伝記の一つとして、何か役立つところがあればと軽い気持ちで手に取ったのですが驚かされました。
カーネギーは南北戦争の頃に北軍の鉄道運輸と電信通信の現場に従事し、リンカーンやグラント将軍といった歴史上の人物に直に接した人物だったんですね初めて知りました(お恥ずかしい<(_ _)>)。
本書の残念な点は
カーネギー自身が途中で書くことを辞めてしまったため中途半端なところで終わっていることです
(まあ第一次大戦の1914年のショックで書けなくなってしまったのでまとめがないのが残念。)
<人物について>リンカーン:誰にでもなんとなく親切で、思いやりのある言葉をかけ、事務所の給仕にさえも、同じようにふるまった。彼の他人に対する態度には差別がなかった。独特のいいまわし「人民の人民による人民のための政治」などが魅力的な理想的な民主主義者だった。
グラント将軍:参謀に「将軍が酒びたりになっている」と噂が伝わっていると忠告されると「なぜもっと早く言ってくれなかったのだい?もう一滴も飲まんことにする」と言い、以後会食時には杯を伏せてしまったそうな。
<本業について>・株式市場の目まぐるしさに惑わされいる人は、健全な判断力を失う。投機というのは寄生虫で、それ自体になんの価値も無い(投機的売買の否定、本業重視)。
・大事業というのは厳しい誠実さの上にだけ築きあげられるもので、それ以外何も要求しない。うまく立ち回るとか、すばしこい取引をやるなんて評判が立ったら、大きな商売には命取りになる。
手違いで不当利得を得た場合には、相手の損失にならないようにすぐに訂正する。たんに法に従うというばかりでなく、相手方に公平と正義をもって接するという評判が、その企業の永続繁栄の基となる。
(マーケットの魔術師でもトレーダー感で桁間違いを修正合ったり、プロの現場は持ちつ持たれつの信頼関係で成り立っているという話がありましたね。)・渡ることのできないところへは入ってはいけない。自分の責任で払うことができないものには署名しない。
・よい卵をみんな一つの籠に入れて、その籠から眼を離さない。成功した人達は一つの道を選んで、それに始終した人達である。
(バフェットと同じ考え方ですね。)・専門家の活用。当時鉄鋼業界では化学者を雇う習慣がなかったが、彼らを雇うことでより純度の高い原料を安く購入できるようになり、競争力が増した。
・従業員のため日用品店を設立し、石炭を会社の買値で従業員に販売するなど福利厚生に務めた。また賃金を会社の業績に連動させた。
・20世紀初頭に当時5億ドルで事業をモルガンを主催者とする合衆国鉄鋼会社に売却し、以後富の分配、福祉事業に傾倒した(図書館の寄贈、福祉財団の設立、
カーネギーホールが有名?)
<解説について>それと巻末の亀井俊介さんの解説が模範的で素晴らしい。
本編を読んだだけではわからない時代背景や○○王といった成功者、思想的な対比にふれています。
「鉄道王」コーネリアス・ヴァンダービルト
「鉄鋼王」アンドリュー・
カーネギー「金融王」ジョン・ピアポンド・モーガン
「石油王」ジョン・D・ロックフェラー
上記の四人は共に南北戦争の動乱期にうまく立ち回り資本築き、戦後の成長期で巨万の富を得たため「強盗貴族(ロバー・バロン)」とも呼ばれた。彼らが活躍した南北戦争後から19世紀末までをマーク・トウェインの小説を出典として「金めっき時代」というそうです。
上記の王と呼ばれた成功者と当時の時代に関する書籍が今後の読書予定に追加されました(⌒〜⌒;Aなかでもモルガン、
カーネギーから鉄鋼事業を買い取ったように鉄鋼業の大合同を成功させ現在のUSスチール(当時は合衆国製鋼会社)を設立した。最盛期に比べ勢力を失ったとは言え、大恐慌を生き延び、日本でも暴れまわっているモルガン帝国に関しては特に興味が湧きました
(そして積み本が増え続ける(´ーT)嬉しいけど疲れるね、入手難度の関係ですぐには無理なので気長に待っていただけるとありがたい)。少年時代より彼(
カーネギー)ほど利発ならば相応の女性関係があってもいいと思うものの本文では語られていない点を上品な伝統や秩序の表れ(として省略されている)と説明を加える辺りわかってらっしゃる(笑。
それにしても伝記というのは事実に基づくリアリティーと当時の生活スタイルが詳細に語られ、新しい技術が取り入れられる過程が偲べ、本当に素晴らしいジャンルだなと改めて思いました。まして成功者の波乱万丈な人生ですからつまらない訳はありませんからね。
将来的にネット上に一般人が
自伝を書いて投稿する流行などが生まれると面白そうですよね。実際ネット上の個人の情報公開が活発化の一途を辿り、情報化された体験を共有できる時代に入りつつある現在、ネット時代万歳!と改めて感じました(飛躍し過ぎですね(⌒〜⌒;A
本書は古い本なので図書館で検索すればきっと見つかると思います、興味のある方はどうぞ(o^^o)